その光景は虎が獲物を貪る姿、名前に合わせると死肉を食べるハイエナ。まるで野生のジャングルに来たのかと錯覚させられた。


すると、誰かが俺の服を掴み後ろへ強く引っ張った。青山だった、殴られたところが青紫になっていて、辛そうにしていた。


「早く逃げるぞ!死にてぇのか!?」


その一言をきっかけに、震えていた足もようやく収まり、走った。
それに鬣犬も気付き、喰うのをやめた。



「え?ちょっとぉ〜どこいくの〜?私も連れてってよォォォ」


吉永を先頭にして俺達は一斉に逃げ出した。吉永は少なくとも二階を探索していた。構造は細かくは分からずとも、ある程度予想は出来ている筈だ。

吉永は次々に曲がり角を曲がり、鬣犬を錯乱させるような逃走経路を辿っていた。

だが、鬣犬は俺のすぐ後ろ、ピッタリと付いてきていた。

鬣犬が手を伸ばしてきた。俺の服に指が掠れ、死を感じさせられる。
捕まったらそれで終い、野宮さんみたいに食べられる....そう考えると足が言うことを聞かなくなりそうになる。

だが、鬣犬は伸ばす手を引き、ゆっくりと歩くだけになった。スタミナ切れだろうか?

俺達はもう一つ曲がり角を曲がると、目の前には一部屋の扉。
その中に急いで入るが、そこには絶望が待っていた。