鬣犬は自分の腹を指した。
つまり、あの地下にいたのは鬣犬の言うヤツらということだった。
そしてその手を拳に変えて、青山を殴った。

青山は俺達の頭上を通り越して倒れた。
歳にしては俺達と同年代。人一人を浮かす程の腕力を持つ女の子なんてまずいない。
実験のおかげなのか、悪霊になって手に入れたものなのかは分からないが、その圧倒的な力の前で、俺達は絶望と恐怖を抱いた。


「そうそう!その顔!恐怖心で一杯になった時が一番の喰い時!!
だけど、あなた達はまぁだぁ〜。まずはこっち〜....
穴ぽかさん♪いただきまぁ〜す」


鬣犬はそう言うと、黒く澄んだ歯で野宮さんの顔面にかぶりついた。
あまりの激痛に野宮さんは両手で鬣犬の頭を叩き、首根っこを掴まれたアヒルのように足をバタバタと振った。

肉がちぎれる音、組織が潰れる音、骨が噛み砕かれる音が響いた。それは映画やアニメで得ることが出来ないリアルさ故、その音の異常さに屈していた。


「美味しい...ウマウマよぉ〜」


ついに野宮さんはもう足をばたつかせるのもやめ、手もだら〜んと力なく垂れていた。
だが、鬣犬は食べるのを止めない。持ち上げるのをやめ、野宮さんの遺体を床に置くと、両手で頭を掴みながらヒザを床に接して顔面を食べ続けた。