誰もがそう思って信じた。
当然俺も信じていた。だが、ある違和感に襲われ、疑心暗鬼に深まっていくのが感じた。


「....あれ?血は?」


普通、腹に撃たれたのもそうだが、額に当たった瞬間、または倒れ込んだ後にも血が出ていないのだ。
どれも黒い穴が浮かび上がるだけで、野宮さんのような鮮血が全く出ていない。


そして俺が呟いた直後、あろうことか鬣犬は立ち上がり、片手に持っていた包丁で銃口を握っていた野宮さんの手を切りつけた。

拳銃は空へ舞い上がり、その拳銃を目で追うのを見計らったのか、鬣犬は包丁を思いっ切り野宮さんに投げた。
包丁は野宮さんの喉に突き刺さり、咄嗟に両手で喉を抑えた。

その一瞬の出来事は拳銃が床へ落ちるまでのことだった。そして俺達の理解が追い付いたのもそれくらいだった。


「アハハハハッ!穴ぽかだぁ!!どんどん穴増やしてぇ〜ジュース頂戴ぃぃぃ!!アハハハハハハッ!!」


「ごぼぼぼ...グッ....ガハッ....」


狂乱に喜ぶ鬣犬と何か喋りたいのか上手く喋れなく悶絶する野宮さん。さっきまでの立場は明らかに違かったのに、一瞬で逆転されてしまった。

だが、野宮さんはまだ諦めていなく、喉に刺さった包丁を抜き取った。