近付いてきた鬣犬の額に狙いを定めて一回引き金を引いた。


バァンッ!


そんな耳が痛くなりそうな音と共に、鬣犬は後ろへ数歩後ずさりをした。
野宮さんの銃弾は額に当たっていた。髪が左右に別れていて、額が良く見えたからこそ分かったことだ。
当たった所は真っ黒の穴になっていて、周りに少しヒビが広がっていく。

黒目は上に上がっており、白目の状態だった。口を大きく広げ、かすれ声を発しながらそのまま後ろへ倒れ込んだ。


「ハァ、ハァ....クソっ....ふざけやがって...
めちゃくちゃ痛てぇぞクソ....」


野宮さんはコップから水を零したかのように止まらない血を、片手で必死に抑えていた。
額には汗が吹き出し、とても辛そうな顔をしていた。


「野宮さん!最後まで気を抜かないでください。ダメ押しの一発を!」


青山の指示に野宮さんは無言で縦に頷く。
片手で倒れている鬣犬に銃口を向けた。


「悪く思うなよクソ女。正当防衛ってやつだ。」


野宮さんがそんな捨て台詞を吐き捨てると、引き金を引いた。
またさっきの爆音が響き渡り、銃弾は鬣犬のお腹に命中した。

鬣犬は撃たれたのにも関わらず、ピクリとも動かなかった。絶命したのだろう。