水滴の正体は真っ赤な血、不気味な程に綺麗な赤い液体だった。
野宮さんは顔を抑えながら、頭を上に上げることが出来ずにいた。


「全員後ろに下がれ!!」


野宮さんの怒号に等しい声が屋敷を包み、俺達はビクッと身体を動かした。

そして、野宮さんが片手を顔から話した時、何があったのか次の瞬間ハッキリと分かった。


野宮さんの鼻に大きな包丁が横から刺さっていた。その痛々しい光景に血の気が引くのを感じた。

そして野宮さんに包丁を刺した張本人は、曲がり角かゆっくりと姿を現した。


異様な雰囲気と異臭を放つ鬣犬が姿を現した。片手には野宮さんの鼻に刺さっている同じ包丁を握って、薄汚い服を着飾っている。
長い髪を垂らしながら顔を上げ、ギリギリ見えるギラついた目で欺くように見ながら、笑みを浮かべていた。



「穴ぁ〜ぽっかり〜穴ぽかぁ〜。ふふふっ痛そ痛そ。
やっぱりいたんだね〜、あの罠が作動して誰もいないわけないじゃぁん。待ち伏せしちゃったよぉ〜。」


低い声で俺達にそんな事を言う。寒気が過ぎるが、そんな事より俺はこの声は聞いたことがあった。


「...お前、まさか....地下室で俺に?」


「そうだよぉ!よぉ〜く分かったねぇ〜偉い偉い。」