「それより吉永さん。"そんなんじゃダメ"っていうのはどういう意味なんだい?」


「窓を壊してそこから逃げようとしたんですよね?私もそうしようとした....けど、窓は壊れなかった。」


「どういうことなんだ?窓が硬すぎて壊れないってことかい?」


「なんて言えばいいのか...何故か当たらないんです。窓を覆ってる木の板は当たるんですけど、窓には何か....見えない壁みたいなのが貼ってあって...
とにかく、窓は壊せません。多分、玄関からじゃないと....」


ここは二階、玄関に行くまでには階段を使わないと辿り着けない。幸い階段から玄関までの距離は近いが、難点は階段の向きだ。階段は玄関の方を向いている。つまり、台所の後ろの方が見えないのだ。

階段の柵から注意して見ても、台所全てを見ることができなく、必ず死角ができる。
構造上、台所の端で身体を隠し、待ち伏せされたら発見するのは遅れる。


全員がその事を理解してるが故、空気は重くなる。


「....だけど、行くしかない。行かなきゃいつまでも出れない。」


俺の一言に全員重く頷く。


「よし、じゃあ俺を先頭に付いてきてくれ。潤平君、すまないが最後尾でいいか?」