吉永は気持ち悪そうに言った。その意味は俺達も安易に想像がつき、背筋がゾッとする。


「鬣犬は長富の後頭部に夢中になった。
肉を食いちぎる音、咀嚼音、血をすする音が....
私は長富を置いて逃げて、別の部屋に逃げ込んだの...それがこの隣の部屋。」


吉永は左の方を目で俺達に教えてくれた。


「本当に私って最低だよね....長富を危険な目に合わせただけじゃなくて、連れてきた張本人なのに置いていくなんて...」


「それは仕方が無いことだ。お前も精一杯だったんだろ?それなら誰もお前を責めることなんて出来ない。」


「青山....あんたがそんなセリフ言うと気持ち悪いね。」


「あ!?ふ、ふざけんなよこんな時に!」


青山はわかりやすい程、顔を真っ赤にした。その顔を見て吉永は微笑する。


「冗談冗談、ありがとね。

それにしても理沙と千恵はすごいね。あんなのが急接近してきても耐え続けたってことでしょ?
私だったら月璃みたいに自殺しちゃいそうだし....」


吉永は上の空を見ながら、悟るように呟いた。
俺達はベットの下に隠れて気付かれなかったからいいが、吉永のように襲われたりしたら正しい判断ができるから想像もつかない。