青山は軽傷とは言え、容赦なく聞いてきた。
「おい青山。それは今聞くこと」
「いいんだ西条。私も....すぐに話さなきゃいけないと思ってるし...あいつがいつここに戻ってくるか分からないしね....」
吉永はどこか悲しく、遠くを見ていた。
「そっか....理沙と千恵、長富を殺したのは..."鬣犬"....そんな名前なんだね。」
「あぁ。ここの屋敷の秘密の実験台だ。人の肉しか食べない残酷な実験のな。」
「....私達は二手に別れたんだ。本澤と坂目さん、私と長富でね。
二階は思った以上に広くて、隅々探していたら結構時間がかかったの。後少しで調べ終わるって時に下の方から何か大きい物音がしたの....まるで大きい門が閉じたような...」
吉永が示すその音は、すぐに地下室の秘密部屋の事だと分かった。
「私はそれが気になって、一階の方へ降りようとしたの。そしたら階段の手前辺りで鬣犬に遭遇したんだ。
あっちは気付いてないっぽいけど、私その時反射的に小さく悲鳴をあげちゃったの。
鬣犬は笑いながら手に持ってた包丁を、ブンブン振りながら追い掛けてきた。
私は怖くて怖くて、声を上げながら逃げて...近くの部屋に入ったの。そしたらそこに...」
「長富がいたのか?」
俺の問いに吉永は無言で頷く。