「よ、吉永!?お前....」


「ハハッ....あの女に切られたんだよ。まぁそんなに深くないと思うけど....あんまり気分は良くないや....」


吉永は部屋のドアを身体で閉めると、ヘナヘナとその場で崩れた。



「お、おい。大丈夫か?見せてみろよ」



俺はそう言いながら近付いて、吉永の手の内に隠された傷の具合を見た。
見た時に後悔することになるとはその時考えても見なかった。

死を目の前で見えるから平気と考えていたのかもしれない。
実際間近で傷口を見てみると、気が失いそうな感覚を得た。

綺麗な色をしている血と肉が逆に恐ろしく、自分ももしそうなってしまったら、と想像するだけでゾワゾワした。

そんな様子を見ていた野宮さんは、ポケットから取り出したハンカチで、傷口の上で巻いて強くしめた。


「痛ッ!の、野宮さん?もう少し優しく出来ないの?....一応女子なんだけど....」


「緩くしたらばい菌も入るかもしれないし、止血にもなる。我慢してくれ。」


吉永は痛さに顔を顰めながら、細めで自分の腕を見つめていた。



「なぁ吉永、説明してもらおうか。今までであったことを、鬣犬と遭遇したんだろ?どういう状況だったのか説明しろ。
坂目さんと本澤は無事なのか?」