だけど、僕はその犯人のせいで精神的に追い詰められて辞職した。
トラウマで心に傷が残ってるが、僕はそれでも同じ人を出したくないと思って、弱々しい手を差し伸べた。

そしたら彼らが俺の助けを求めてきた。だったら....僕が行動しない理由はないだろ?」


野宮さんは矢沢さんの目線から逸らし、断崖絶壁とも言えるコンクリートの壁を見つめた。


「じゃあやっぱり...この先は例の....」


「あぁ。分かってくれるか?彼らの事が信じられないなら一緒に付いていってやってくれ。
僕もいきたいのはやまやまなんだが、どうも一歩踏み出せなくてね。犯人の手掛かりと彼らの無実を証明できる。君にとってはメリットしかないと思うが?」


野宮さんはコンクリートの壁を見つめながら考えていた。すると、今まで隣で黙っているだけの坂目さんが野宮の横に立った。


「行きましょう野宮さん。今回の件、彼らが疑われているのはただ被害者と接触があっただけで、まるで証拠があがっているわけじゃないですか。
なら、ここで白黒はっきり出来るなら....自分は付いていく選択を選びます。

もしもの時はそれ相応の対応すればいいですし...どうですか?」


坂目さんが野宮さんを説得すると、野宮さんは顎を触りながらフッと笑った。