「痛っ」
「我慢して」
「う~…」
保健室へ辿り着いたのはいいものの、先生がいなかったので、代わりに中川君に治療してもらっている。
「シップ臭…。」
「仕方ないだろう。」
「はーい…」
1台のベッドに座って、もう1台の中川君が座っているベッドに、あたしが足をのせている状態。
髪を片耳にかけた中川君は、少し色っぽかった。
「はい、終わり。」
「ありがとう…。」
「………こころ、さん。」
「…なに?」
中川君が、ジッと見てくる。
見つめられると、なんだか泣きそうになる…。
「…中川君…ど、どしたの?」
「……早く泣けば」
「…えっ?…」
まるで、あたしの心を見透かしたよう。
そんなこと言われると…
「…本当に……泣いちゃうよ…」
いいよ、と少し笑って中川君は救急箱を元の位置に戻す。
ね、涙が傷口に染みるよ。
って言ったら、
じゃあ、もう一回消毒液塗らなきゃね
なんて、笑いながら言われた。
だけど
あたしの涙は止まらなかった。
悲しい涙と、恐怖の涙。
流しきる事で、明日また生まれ変われる気がした。