「…正人。」


「あ!?んだよ!!」



取り乱している正人に、この前の事を言う。



「…………見たよ、彼女と歩いているところ」





「………………はっ…?」



正人は口を開けたまま、しばらく動かなかった。


そろそろ、30分が来る。




「……………ね、正人。大好きだったよ。……さよなら。」



そう言って、立ち上がる。


もう、これで終わりだ。
早かったなあ…


なんて思いながら、ドアノブを持つ。



「待てよ」



正人の低い声とともに、開きかけたドアが閉じた。




……怖い…。

後ろを、向けない。




ガッ



「っ…」


正人に力強く腕を引っ張られる。



「な、何…」



強制的に、正人の方を向かされる。


暗くて、表情が分からない。



「ウゼェよ…」


「……え」



バンッ!!




「いっ…」







………衝撃的、の一言だった。

頬がジンジンする。

正人は、あたしに手をあげた。



「調子のんなよな。」


ドンッ!


足で体を蹴られた。

その拍子で体制を崩し、膝を床につく。





正人が、こっちへ来る。

カーテンの開いていないこの部屋は、薄暗くて、なおかつ見えにくい。



「正人…痛い…」