私は橋本翔に案内されて4階から3階に来た。
「小坂さんってさ…」
「何?」
「直人のこと好きでしょ?」
「は?…何それ」
あまりのことに動揺した。
「あいつとは幼馴染というか…それ以上というか…」
「つまり…幼馴染以上恋人未満って感じ?」
「まぁ、そんな感じ…かな…?」
多分そんな感じ…
なんか虚しいな…
「ここがクラの練習室」
「あ!せつなだ!」
「新人ちゃん?」
私たちの後ろから聞こえた声に振り向く。
「美希先輩、そうです。小坂唯って言うんです」
「そう。お疲れ様。どう?せつなに挨拶くらいしていく?」
ニヤニヤしながら言う先輩…それを迷惑そうに流す橋本翔。
「…失礼します…」
「あー、拗ねちゃった」
「あの…体験は…」
「あー、ごめんごめん、どうぞお入りくださーい」

「これがマウスピース。こっちがタルっていうの。これを合わせて…あ!その前にリード。これ舐めてて」
「あ…はい」
舐める?
舌でベロって感じ?
「あー、口に含んで濡らす感じかな」
「あ、はい!」
「前歯に当たると簡単にかけちゃって音でないから気をつけて」
「はい」
私はリードを口に含んだ。
なんかアイスの木のヘラの味に似てる…
「もういいかな。それ貸して」
私はリードを先輩に渡した。
「よし。まずこれで吹いてみて?」
渡されたのはせつなたちが持っているよりも遥かに短い。
「息を吸って吐いて」
「はぁ…」
そしたら音が出て嬉しかった。
金管ばかりでこんな感じ久しぶりだ。
「鳴るねぇ。いい素質持ってる」
「ありがとうございます!」
「そうだ。知ってる人の方がいいわよね?せつな!お友達に指教えてあげて!」
「あ、はい。分かりました」