「ここが低音パート」
潤先輩に連れらて来たのは4階の講義室。
音楽室からも近くて移動が大変なチューバを運ぶのに便利だから、らしい。
「そろそろ、あいつが…うわ!」
「え?うわ!」
私たちは2人で驚いた。
ドアのガラスにへばりついた女の人がいたから…
「あれー?もしかしてこの子が新人ちゃんかなぁ?」
「そう、菜々子(ななこ)あんまビビらせんなよ?」
「あたし、ビビらせてないんだけど?」
「今年も噂だったぞ。ユーフォの先輩が怖いって」
「少し楽器のこと語ったくらいで?」
「20分も喋られたって言ってたけど?」
「それより早く、どっか行ってよ。これこそ時間の無駄でしょ?」
「チェ、要領のいい奴」
「ありがとう」
「褒めてねぇーっての」
そう言って潤先輩は音楽室に戻って行った。
「これがユーフォ。正式にはユーフォニアムね。金管の中ではあまり目立たないけど、そこがいいのよ。ほら、あのことわざよ。ほら…あの…何とかの下の…」
「縁の下の力持ちですよ」
「おぉ、さすが佐藤ちゃん」
隣の席に座ってた人が教える。
靴の色からして1年生だ。
「で、こっちがチューバ。ほら、真也(しんや)ちゃんと魅力を伝えなさい」
そしたら、隣の2年生の男子が指名された。
「はい。これはチューバ。大きくて、重い」
…
「え?終わり?」
「はい。終わりです」
「えー、なんでよ。じゃあ私が伝えてあげる
チューバは金管の中でもthe低音って感じで低くて、重い音を出せる。目立った部分を吹くこともないし、大きいから息が苦しい。だけど無いと、なんか寂しくなるような繊細かつ魅力的な楽器なのよー。ユーフォより大きいでしょ?だからユーフォを超える…うんとねぇー。縁の下の力持ちの強力版…みたいな」
「へぇ」
この人、お喋りだなぁ。
「で、これがユーフォのマウスピース。吹いてみて?」
「はい!」
やっと吹ける…
要領はさっきと同じだ!っと思った私は甘かった。
吹き方はテレビで見た。
咥えたり、口に含んだりしないで、口に当てるようにするんだ。
「はー…ふー!」
だけど全然音が出なかった。
あれ?なんで?
もう一回!
そして、私は息を吸う。
だけど、下の細い部分から息が抜ける音しか聞こえない。
「唇を震わせるんだよ。こうやって」
そう言って真也先輩は自分のチューバからマウスピースを取ってそれに息を入れた。
それだけで音が出た。
すごい。
「はぁ、はぁ」
私は酸欠状態だった。
「うーん。口は金管向きじゃ無いのかな?」
そう言って私の顎を持って、上を向かせ、親指で私の下唇を撫でた。
「あの…せんぱ…」
その行為になぜかドキドキした。
「まぁ、楽器を付けたら音が出るかも」
そう言って菜々子先輩は自分のユーフォにマウスピースを付けた。
そして持ち方を教えてくれる。
だけど、なんだか筒抜けの様な音しか出なかった。
「チューバはどう?」
菜々子先輩はそんな私を見兼ねて、声をかけてくれる。
「すいません…」
私は謝るしかできなかった。
「何、しょぼくれてんのよ。みんな楽器の向き不向きがあるのよ。私だって木管なんて吹けないし、真也だってそうよ」
「自分の楽器というパートナーを見つける。それが今すべき事だ。だから、たくさん模索していくんだよ」
真也先輩が言ってくれる。
「はい。じゃあチューバ吹いてみます」
私はチューバを持たせてもらって、吹いてみた。
だけど、やっぱり筒抜けで…
「はぁ、はぁ…」
「もういいよ。よく頑張った」
「次はどうする?まだここにいる?」
「次の楽器行きます」
「オーケー、次はトランペットかぁ、この階は金管が続くなぁ」
心が重くなった。
自分のほっぺが張っている様なそんな感じの痛みがあって、摩った。
「痛いのか?」
「あ…はい」
真也先輩が寄ってきた。
「それは一生懸命、がむしゃらに吹いた証拠だ。だから誇らしく思え」
「はい!」
潤先輩に連れらて来たのは4階の講義室。
音楽室からも近くて移動が大変なチューバを運ぶのに便利だから、らしい。
「そろそろ、あいつが…うわ!」
「え?うわ!」
私たちは2人で驚いた。
ドアのガラスにへばりついた女の人がいたから…
「あれー?もしかしてこの子が新人ちゃんかなぁ?」
「そう、菜々子(ななこ)あんまビビらせんなよ?」
「あたし、ビビらせてないんだけど?」
「今年も噂だったぞ。ユーフォの先輩が怖いって」
「少し楽器のこと語ったくらいで?」
「20分も喋られたって言ってたけど?」
「それより早く、どっか行ってよ。これこそ時間の無駄でしょ?」
「チェ、要領のいい奴」
「ありがとう」
「褒めてねぇーっての」
そう言って潤先輩は音楽室に戻って行った。
「これがユーフォ。正式にはユーフォニアムね。金管の中ではあまり目立たないけど、そこがいいのよ。ほら、あのことわざよ。ほら…あの…何とかの下の…」
「縁の下の力持ちですよ」
「おぉ、さすが佐藤ちゃん」
隣の席に座ってた人が教える。
靴の色からして1年生だ。
「で、こっちがチューバ。ほら、真也(しんや)ちゃんと魅力を伝えなさい」
そしたら、隣の2年生の男子が指名された。
「はい。これはチューバ。大きくて、重い」
…
「え?終わり?」
「はい。終わりです」
「えー、なんでよ。じゃあ私が伝えてあげる
チューバは金管の中でもthe低音って感じで低くて、重い音を出せる。目立った部分を吹くこともないし、大きいから息が苦しい。だけど無いと、なんか寂しくなるような繊細かつ魅力的な楽器なのよー。ユーフォより大きいでしょ?だからユーフォを超える…うんとねぇー。縁の下の力持ちの強力版…みたいな」
「へぇ」
この人、お喋りだなぁ。
「で、これがユーフォのマウスピース。吹いてみて?」
「はい!」
やっと吹ける…
要領はさっきと同じだ!っと思った私は甘かった。
吹き方はテレビで見た。
咥えたり、口に含んだりしないで、口に当てるようにするんだ。
「はー…ふー!」
だけど全然音が出なかった。
あれ?なんで?
もう一回!
そして、私は息を吸う。
だけど、下の細い部分から息が抜ける音しか聞こえない。
「唇を震わせるんだよ。こうやって」
そう言って真也先輩は自分のチューバからマウスピースを取ってそれに息を入れた。
それだけで音が出た。
すごい。
「はぁ、はぁ」
私は酸欠状態だった。
「うーん。口は金管向きじゃ無いのかな?」
そう言って私の顎を持って、上を向かせ、親指で私の下唇を撫でた。
「あの…せんぱ…」
その行為になぜかドキドキした。
「まぁ、楽器を付けたら音が出るかも」
そう言って菜々子先輩は自分のユーフォにマウスピースを付けた。
そして持ち方を教えてくれる。
だけど、なんだか筒抜けの様な音しか出なかった。
「チューバはどう?」
菜々子先輩はそんな私を見兼ねて、声をかけてくれる。
「すいません…」
私は謝るしかできなかった。
「何、しょぼくれてんのよ。みんな楽器の向き不向きがあるのよ。私だって木管なんて吹けないし、真也だってそうよ」
「自分の楽器というパートナーを見つける。それが今すべき事だ。だから、たくさん模索していくんだよ」
真也先輩が言ってくれる。
「はい。じゃあチューバ吹いてみます」
私はチューバを持たせてもらって、吹いてみた。
だけど、やっぱり筒抜けで…
「はぁ、はぁ…」
「もういいよ。よく頑張った」
「次はどうする?まだここにいる?」
「次の楽器行きます」
「オーケー、次はトランペットかぁ、この階は金管が続くなぁ」
心が重くなった。
自分のほっぺが張っている様なそんな感じの痛みがあって、摩った。
「痛いのか?」
「あ…はい」
真也先輩が寄ってきた。
「それは一生懸命、がむしゃらに吹いた証拠だ。だから誇らしく思え」
「はい!」