「遠野さんにねっ、渡したいものがあって…!」


周囲の声に動じることなく、というより少しも気になっていない様子で鞄の中をまさぐっている。




へぇー、意外。


純情に見えて、いや純情に変わりはないんだけど、可愛いと言われても顔を赤くしたりする事はないんだ。


どうでも良い、といった感じ。


意外と大物かも。



「あの、遠野さん。昨日は本当にありがとう。凄く楽しかったし助かりましたっ」



「ううん、私も楽しかったし。全然いいよ」




「ありがとう~。でね、私お礼にこんなものを持ってきたんだけど…」



そう言って差し出したのはくまのぬいぐるみのストラップ。

カラフルな布を使い分けて作っていて、愛くるしい顔をしていて一言で言うととっても可愛い。



「可愛い…」


「これ、遠野さんにあげるね。はいっ」


「え?」


あまり状況を把握出来ないまま、くまのストラップを受け取る。



「え、高崎さん、なんで?私なにも高崎さんにあげてないのに貰う権利ないよ」



元はと言えば私が強引に誘ったんだし、それに遊んでお礼をもらうというのは少しおかしい気がする。


「でも、カット代ただにしてもらってこんなにステキな髪型にしてもらったし、服選んでもらったし、遊べて嬉しくて、本当に感謝の気持ちでいっぱいだから」


高崎さんはふんわりと顔を赤らめて微笑む。