「いや……。中学のときは別にかな…」


「へ~!なんか、きっかけがあったりするの??」


どんどん話が嫌な方向へ進んでいく。


しまった。

うんって言っておけば無難に終わったかもしれない。




きっかけ。


あるよ。


きっかけとしか言い様のないきっかけが。



でも、高崎さんに話すことじゃないし、話したいとも思わないから。


「特にないよ」

あ、また。

びっくりする程、冷たい声が出た。


高崎さんが、少し怯えた表情になる。



ごめん。


そんな顔させたかった訳じゃなくて。


私は………………。




「ね、アイスでも食べない?前に食べにいこって言ってたよね」


作り笑いを浮かべて話をそらす。





誰にも見られたくない胸の傷を隠すには、少し誰かの胸を傷付けてしまうらしい。



正しい選択なんてわからない。



器用じゃなくて、器用になりたくて、足掻きながらもがきながら生きているんだ。