―コンコン
「入れ」
「失礼します。秋鷹様、夕食の用意ができました。旦那様からなるべく早く来てほしいとの事です。」
そう淡々と述べる神崎をあとにして馬鹿長い廊下を歩く。
俺の部屋は別館にある、そしてリビングなんかが本館にある。
本館は帰ったときとご飯の時しか行かない。
別館で色々揃うからだ。
リビングへ行くと父と母と兄と姉と妹が揃っていた。
「秋鷹、今日は紹介したい人がいるんだ。神崎から聞いていると思うが、秋鷹の新しいメイドだよ。神崎呼んできて」
神崎はかしこまりましたと言い、回れ右をしてドアの方へ向かいドアをあけた。
「失礼します。お久しぶりです、秋鷹様。柊沢梨真です。」
思わず絶句しかけた。
「父さん。なんでこの人が?」
「えっ!?駄目!?梨真ちゃんいい子だよ。どうせなら秋鷹のお嫁さんにほしいよ~」
「まあ、式はいつにしましょう?」
俺の疑問をよそに楽しそうな父さんと母さん。
ちゃんと聞けよ!
「冗談よ、秋鷹。梨真ちゃんを雇ったのはこの子に家がなかったからよ。若いのに苦労なさっているから私、住み込みで働かないかって言ったの。そうしたら梨真ちゃんがOKしてくれたの。ついでに秋鷹の学校での様子も知りたいから学校に行かせる事にしたの。」
「まあ、そんなわけだ。秋鷹、夕食が終わったら自分の部屋まで案内しなさい。」
そういう理不尽な両親の声に俺の不満は掻き消された。