「ただいま」
「あっ、絃ちゃーん!もう帰ってこないから心配したんだよ?」
「道に迷っちゃったみたいで……ごめんね?」
あの後は、お互いに無言のまま歩いて、何となく見慣れた道に出てからは、佐伯家まですぐだった。
葵くんは本当に心配してくれていたみたいで、帰った瞬間に走って私の元へと来てくれた。
「ううん、本当に無事で良かったよ」
ぎゅっと抱きついてくる葵くんは、一つ下とは思えない可愛さで……
思わず、ぎゅっと抱き返してしまった。
「……」
そんな私たちを横目に、蓮くんはさっさとリビングへと行ってしまった。
「帰ってくる間に蓮兄と何かあった?」
「ううん、別に何もないよ」
私と蓮くんとの間に違和感を感じたのか、そう問いかけてきた葵くん。
何かあったかと言われれば、あったのだけど……
蓮くんからキスされただなんて、口に出来るわけなんかなくて、嘘をついた。
ごめんね、葵くん。