「ちょ、ちょっと何すんのよ!!」
ここが夜の住宅街だということを忘れて、大声でそう叫ぶ。
何かの正体が、蓮くんの唇だと理解してから0.1秒。
私のファーストキスが奪われた。
大声で叫んだんだから、絶対蓮くんの耳にまで届いているはずなのに、立ち止まらず歩き続ける蓮くん。
「ちょっと!聞いてるの!?」
ぶりっ子キャラはどこへ行ったのやら。
無我夢中で、蓮くんを問い詰める。
走って行って、蓮くんの目の前で仁王立ちしてから、やっと蓮くんは立ち止まった。
「言っただろ。変な上目遣いと気持ち悪い話し方がうざかったから全部塞いでやったんだよ」
「なっ……」
はっきりと拒絶されてしまった私は、返す言葉がない。
「目の前に立たれると邪魔なんだけど」
「……ごめんなさい」
さらに不機嫌さが増した蓮くんに道を開けて、謝る私。
……なんで私が謝ってるんだろう。
3ヶ月以内に俺たちを落とせって言ったのは蓮くんなのに。
その条件を達成するために頑張ってただけなのに。