翔side
「…お願い、私のためを思うなら先生に言ったりしないで」
そう言った目は潤んでいた
「っおい!」
逃げるように走っていってしまう
「…はー」
緊張した、なんであんな可愛いんだよ
俺が桃原に惚れたのは、席が隣になった時
恋だのなんだのまったく興味がなくて野球一色だった俺の世界を変えたのはあいつだった
最初は可愛いなーくらいにしか思ってなかったはずなのに
体育祭の日、俺はアンカーを任されて気合いが入っていた
野球でもピッチャーを任されて、プレッシャーには強いほうだと思う
…ただあの日は、前日の部活で足をひねった
だから少し押されたくらいで転倒して、優勝を逃した
「ごめん!」
足をひねったのなんて言い訳だ
だからただクラスメイトに頭をさげた
「いーよ!誰にだってミスあるしね」
「しょーがないって!」
みんなして励ましてくれたけど、ただ申し訳ない気持ちでいっぱいで
「黒瀬」
…桃原
「ごめんなーだせーな俺」
ははっと笑いながら言うと
「かっこよかった
こけたのにすぐ立ち上がって挽回したの」