達裕「また明日ね」

俺「おう」

いつも達裕と別れる場所

この景色も もう何千回目だろうか

晴れだったり雨だったり天気は変わるが
もう基本パターンは同じ この景色

たまに達裕が振り返る事が有る

達裕「あ!あのゲーム1人用だから
部屋で1人で やってみてねw」

こんな風に。

俺「おっけ、じゃあな」

俺は この見飽きた光景を
出来るだけ長時間 見ない様
直ぐに達裕に背を向け
振り返らずに手を振る

例えば
その時その手を
達裕が引っ張って来てでもしてたら
俺は どうして居ただろう

…体が捩れて その場に転げて居たかな

達裕は笑ってくれただろうか

手を振った後は
急に1人に成った寂しさか何か
そんな事 思い付かない位 静かだった

此処から俺の家迄は
ダラダラ歩いても5分と掛からない

大量に洗濯バサミが落ちてる とか
リアル バナナの皮が落ちてる とか
電線に布団を干して在る とか
何でも良いから何か無いかな
って思うけど
本当 何も無い…つまんね。

昔からの住宅街って感じで
ご近所さんも知れた人しか居ないし

俺「只今」

妹「お帰りー」

玄関で丁度 妹と遭遇した

部屋に荷物を置いて
妹が作ってくれた飯を食べて
風呂に入って
テレビを見て適当な時間に
部屋に戻って寝る

コレが俺のメカニズム

親は居るけど殆ど居ない位 居ない

親父はタクシーの運転手で
お袋は看護婦って感じかな

昔は旅行にも行ったりしてたけど
俺等が物心 付いてからは
夜勤、日勤の繰り返しで忙しく
特に説明する様な
出来事が無い位には関わりない

妹は ご飯が済んだら
自分の部屋に戻って彼氏と電話してるし
特に重要な事位しか話さない

リア充に俺から振る会話も特に無いしな

テレビを見て居たら雨の音が して来た

俺「本当 達裕の予報は当たるなあ」

煩く成ると眠れなく成るから
部屋に行ってベットに入った

今日の出来事を振り返って見るけど

俺「お休み、俺」

・・・今日も つまんなかったな、俺。



俺は忘れて居た

''迎無-LIFE-'' の事を。

知らなかった

振り返れば
見えて居たかもしれない景色を。

守れたかもしれない光景を。