「なんで……僕は陽光と双子なの？」
小さい頃。
台所に立つ祖母が忙しく手を動かす姿を傍らで見つめながら、不意に漏らしたことがあった。
母親が入院することになり、手のかかるやんちゃな陽光を父親が、
大人しくて手のかからない俺が、田舎の祖父母の元へ預けられた。
あの頃のことは、今でもはっきり覚えている。
ある日。
目が覚めれば見慣れない風景が広がり、どこを探しても母さんも父さんも陽光も居ない。
怖かった。
このまま、迎えなんて来ないんじゃないか……。
毎日そんなことを考えながら、ビクビクしていた。
祖父は躾に厳しい人だった。
箸の持ち方、正座、とにかく少しでも乱せば庭の端にある蔵に閉じ込められる。
薄暗く、夏でもひんやりとした空気が立ち込めるそこが……嫌で仕方なかった。
