野原に着くなり、俺は這いつくばって地面を睨みつけた。




三つ葉のクローバーはこんなに溢れかえっているのに……なんで四つ葉は見つからなかったんだ……。




今更探したところで、茜の母さんが戻ってくるわけじゃないのはわかってる。




でも、居ても立っても居られなかった。


悔しかった……。




野原の真ん中あたりに差し掛かったところで、俺はあるものに気付いた。




草花の中で、不自然に佇む柔らかい赤の封筒。




慌てて中を開ければ……中には四つ葉のクローバーが入っていた。




封筒の表に書かれた、


『雨音へ』



その三文字を見た途端、両目から堪えきれなくなった涙が溢れ出した。




それと同時に、ずっと曇っていた空からは雨が降り始めた。



こんなに夢中になったのは、悔しい気持ちの中に……自分の母親は助かって欲しいという……狡い気持ちがあったからかもしれない。




人の心を温めることの出来ない、冷たく自分勝手な雨……。





お日さまに憧れるばかりで……自分は何も温かいものを与えることの出来ない哀れな存在。




だから俺は、雨が嫌いだ……。