蔵に現れた男の子、茜はそれからも毎日蔵に現れては俺を外に引っ張り出した。




「お前の祖母ちゃんに聞いたぞ。母さん入院してるからこっち来たんだろっ?」




茜が俺に話かけてくるときは何故か、いつも仁王立ちだった。




俯く俺はいつも、茜の腰に当てられた両手と開いた足ばかりを見ていた。




「俺も母さん入院中。夏休みだから父さんの田舎に来てんだ」




茜の母親も入院している。
思わぬ共通点は、一気に俺の心を茜に近付けた。




「だからさ、一緒に探そうぜっ」




にっと笑う茜に引かれた腕に、体が一歩前に進む。




急ぎ足の茜に引かれてやってきたのは、草花の生い茂る野原だった。




「……何を探すの?」



「クローバー。四つ葉の」




一歩後ろに居た俺に振り返り、そう答えるなり茜はその場にしゃがみ込んだ。




四つん這いになって地面とにらめっこを始めた茜を、俺はただただ立ち尽くして見つめた。




「良いからお前も探せっ。雨音っ」



「っ……うんっ」