「大切なモノ？」
読めない本に挟んである少し黄ばんだ栞を指差し、日咲が不思議そうに首を捻った。
その仕草がまるで小動物みたいだ。
思わずクスッと笑いを零してしまった。
そんな俺を日咲はますます不思議そうに、眉を顰めながら見つめてくる。
「……うん。大切なモノ。大切な思い出が一杯詰まってる」
「へぇっ。一杯か……」
驚いたような、感心したような声をあげた日咲がゆっくりと栞に手を伸ばす。
日咲の細い指先が、手のひらの上に乗っていた栞に触れた瞬間、頭の中にフラッシュバックする思い出。
大切な思い出の一つは、日咲との出逢いだった。
