「……雨音っ」



見えない雨音の表情を窺うように呼びかければ、




「日咲に名前を呼んで貰えると……光を感じる」




遠慮がちに抱き寄せていた雨音の腕にジワジワと力が込められていく。




それに誘われるように雨音の背中に腕を回した。




背は高いけど、ちょっと華奢な雨音の体にぐっと頬を寄せる。




「日咲の名前を呼ぶと……温もりを感じる」




自分は雨音に必要とされている。




次第に弱々しくなる雨音の声を必死に捉えながら、わたしは首を上に向けた。




それと同時に雨音が下げた視線が、わたしの瞳とぶつかる。




「日咲の手が、俺をこの世界につなぎ止めてくれる」




雨音の顔がぐっと近付き、おでことおでこが触れ合った。




静かに閉ざした雨音の瞳には、どんな暗闇が見えているのか……。




見つからない言葉の代わりに、握り締めていた手にギュッと力を込めた。