眠りから目覚めた雨音は驚いたようにわたしを見つめた後、
すぐさま視線を握られていた手へと向けた。
そのまま何も言わずに、わたしの手を握り締める自分の手を見つめ始める。
「嫌な夢、見た?」
少し躊躇いがちに笑みを作り、雨音の顔を覗き込んだ。
雨音は視線を二~三度動かし、言い淀むように口を薄く開き、
「昔の夢、見た」
こう呟いて、困ったような笑い顔を浮かべる。
昔の夢。
雨音の穏やかな表情が歪む程の夢……。
何があったの?
口に出せれば、わたしのモヤモヤは解消されるってわかるのに口に出せ無い。
そんな心情がわたしの顔に出ていたのか、雨音は繋がっていた手にそっと力を込めた。
「小っちゃい時さ……俺だけ母さんの田舎に預けられたことがあるんだ」
そのまま、ポツポツと語り始める雨音に体を向けて話を聞く体勢を取る。
雨音の横顔。
視線はずっと、少し先の地面を見つめていた。
「祖父さんが厳しい人で、箸の持ち方とか正座とか崩したら叱られて蔵に閉じ込められた」