斜め上から聞こえる規則的な寝息。
間近にある雨音の寝顔は、安心したようなどこか穏やかで無防備な表情をしていた。
雨音のこんな表情、見せてくれるのはわたしだけだよね?
小さく笑って、しばらく雨音の寝顔を見つめていたのも束の間、
「っ……」
無意識のうちに重ねられていた雨音の手に力がこもり、あんなに穏やかだった表情は何やら苦しげに歪んでいった。
「雨音、雨音ってば」
辛そうにしかめられた顔が見ていられなくて、慌てて雨音に呼び掛けた。
何度目かの呼び掛けで、ゆっくり瞳を開いた雨音は一瞬驚いたように目を見開いた後、
「……日咲」
今までで一番弱々しい声で、わたしの名前を呟いた。