「あっ、日咲」




珍しく正面から現れたわたしに一瞬驚いた後、
雨音はレンズの奥の目を緩く細めた。




それに応えるように微笑み返そうとするのに、顔に上手く力が伝わらない。




こんな不自然な笑顔……雨音には、きっとすぐにバレてしまう。




何やら言いたげにわたしを見つめる雨音を交わして、さっさと隣に座ってしまおうとした時だった。




「……我慢、しなくていいよ」



「っ……」



右手をそっと握り締めた雨音が、上目にわたしを見つめている。




そこにはいつもと変わらない、柔らかく穏やかな笑顔があった。





心の何処かで期待していたのかもしれない。



こうして、雨音に優しい言葉をかけてもらえることを……。




……やっぱりわたしは、狡い。




「っ……ご、めん……」





自分は雨音を嘘で受け入れている癖に、




雨音の柔らかい笑顔と優しさを求めてここに来てしまった……。