不意打ちだった。
いつものように仲良しのグループで囲んでいたお昼ご飯。
他愛ないお喋りの中に混じって、友達の一人が漏らした言葉。
「日咲さ、陽光くんから雨音くんに乗り換えれば?」
冗談混じりの声色で発せられたこの言葉に、曖昧に浮かべていた笑顔が消えた。
彼女は、雨音の眼鏡を外した顔を偶然見かけたらしく、
「顔、そっくりだったよ。雨音くんなら陽光くん程ハードル高くないじゃん?」
こう言って笑う彼女に、両脇に座っていた二人も同意している。
「日咲もそう思ってんでしょ?」
向けられたいつもの笑顔に、
「ははっ、そうかも」
慌てて作り笑顔で同調してしまう狡い自分。
笑顔を必死に作りながらも、思ってしまう。
ハードルって、なに?
よく知りもしない癖に、
雨音が何が、陽光くんより低いって言うんだろう……。
いつもの楽しい仲間に、憤りを感じた。
違う。
一番憤りを感じたのは、他でもない自分自身だ……。