画面の中の“陽光”の文字をじっと見つめた。




まさかわたしが、陽光くんの名前に喜んでいるなんて……雨音は考えてもいないだろう。




また罪悪感がじわっと込み上げ始める。



そのまま、しばらく動けないでいたわたしは、突然かかってきた電話の着信で我に返った。




「もしもしっ」



着信の相手も確認せず、反射的に通話ボタンを押せば、




「……日咲?」



柔らかくわたしの名前を呼びかける雨音の声が、耳に広がった。




「どうしたのっ?」



ちょっと驚いたニュアンスを込めて雨音に尋ねると、



「今、部屋?」



的を得ない雨音の言葉に思わず眉を顰めて頷いた。




「……窓、月見える?」


「月っ?」




訝しむわたしの声色にも構わず続けていく雨音に、渋々カーテンを滑らせる。




「満月だっ」




窓越しに広がる夜空には、絵に描いたような丸い月が浮かんでいた。