俺に天文部への興味を持たせるために色んな本を見せてきたり、話をしてくる。

合間合間に断りを入れたのだが、それでもめげずに数十分が経った。

…いい加減帰りたくなってきた。

断ってもキリがなく、放置をして帰ろうとしていると「あっ!」と何かを思い出したかのようにしゅがーちゃんは声を出す。


「それと伊坂さんにも入ってもらうつもりなの」


帰ろうとした足を止め、しゅがーちゃんの方を見る。

どうやら体育祭に俺が出るように説得出来た翼ちゃんをとても高く評価しているようだ。

「入ってもらうつもり」ということは、今から翼ちゃんにも入るように交渉するってことか。


「ふーん。翼ちゃんがねぇ…」

「どう?どうっ!?それならいいでしょ?」


前のめりになって尋ねてくるところを見る限り、俺に天文部へと興味を持たせるための最後の切り札といったところだろう。

わかりやすいな、しゅがーちゃん。


「うーん…どうしよっかな~」

「勿論、伊坂さんが入らなかったら松木くんも入らなくていいわ。先生もこれ以上入りなさいとは言わない。さぁ、どうする?」


翼ちゃんが入る可能性はほとんどないと思う。

天文部に興味があったとしても、俺も入るとなればきっと避ける。

それに既に他の部活に入ってるかもしれないし。


「あ。それとね、部活は伊坂さんと松木くんの2人だけよ♪」

「俺と翼ちゃんだけ?」

「そうっ!まだ内緒だけど」


もし、翼ちゃんが部活に入ったとしても2人きりなのであればそれはそれでいいかも。


「…しょうがないなぁ。その条件に乗ってあげる」

「先生、松木くんのそういう素直なところ好きだわ♪」


翼ちゃんが入るにしろ、入らないにしろ、俺にとっては都合がいい。

しゅがーちゃんの思惑に乗るのは嫌だけど、今回は目を瞑ろう。