翼ちゃんが俺を引っ張ってくれる前に俺が手を引くと、軽々と俺の上に倒れ込んだ。
そしてすぐ左横にある頬に軽く口づけをする。
「ご褒美なんだからこういうことしてくれないと」
俺がそう言うと、我に返ったかのようにばっと起き上がる。
面白半分でからかってみたのだが、翼ちゃんの反応は想定していなかったものだった。
左頬を手で押さえ俺を見下ろす翼ちゃんの顔は真っ赤。
今まで無表情だった翼ちゃんが、だ。
自分から面白半分でやったのだが、こんなに顔を真っ赤にされてしまうと困るものだ。
「次にご褒美をくれる時は期待してるよ~」
笑顔で余裕ぶったが、正直なところ割とドキドキと胸が鳴っているのがわかる。
「もう先輩には一生ご褒美なんてあげませんっ…!!」
どうやら俺の翼ちゃんへの気持ちはお気に入りではなく、別のものになり始めているのかもしれない。