とは言っても、仲良しになったわけではない。
私が極力無視をしようと黙っているため、ほとんど先輩が一方的に話をしてくるだけだ。
たまについ返事や相槌をしてしまうととても嬉しそうな笑顔を見せる。
本当に変な人。
「それでね、1つ伊坂さんお願いがあるの」
「私にお願いですか?」
「そう。もうすぐ体育祭があるじゃない?」
「はい」
佐藤先生は1枚の紙を私に見せる。
その紙には体育祭のプログラムが書かれてあり、ある競技はペンで丸く囲まれていた。
佐藤先生はその丸く囲まれていた『学年別リレー』の競技を指さす。
「この学年別リレーにだけは必ず出るように伊坂さんから松木くんに言って欲しいの」
「えーっと……はい?」
「松木くんね、ここ最近一応学校に来て出席はするようにはなったものの授業に全然出なくて…このままじゃ卒業が危ういのよ」
「はぁ……なるほど…」
話の始めに先輩の名前が出た時点で薄々先輩が関わってくることではないかと予想はしていたが…
関わるというよりも、そもそも先輩自体の問題だった。