5月中旬。
私は佐藤先生に呼び出され、職員室へと向かっていた。
怒られるようなことをした覚えもなければ、そもそも佐藤先生と話したことすらない。
佐藤先生は3年生の担任で、1年生の私に用事なんてあるのだろうか。
「あの…佐藤先生。伊坂翼です」
「伊坂さん!来てくれて助かったわー!」
私が来て助かったと言われ、首を傾げる。
どうやら怒られる心配はなさそうだが、助かったとはどういう意味なのかがわからない。
「伊坂さん、松木くんと仲良しよね?松木春佳くんね」
「松木先輩とは仲良しではないですけど…」
「えっ?でもよく一緒にいるわよね?」
「少し話ぐらいならしますけど」
「関わりたくない」「飽きてください」と先輩に言ったのだが、そう言った次の日もそのまた次の日も…
先輩はほとんど毎日、私に会いに来ては少し話をし、「またね」と去って行く。
結局何も変わらずに今日まで続いている。