少し間が空いた後、子猫の方を向いたまま先輩はいつもとは違う暗い声を出した。
「…翼ちゃんはそんなに俺のこと嫌いなの?だから俺と会うのは嫌?関わりたくない?」
「別に嫌いというわけではないですが、もう関わりたくはないです」
先輩が嫌いというわけではない。
嫌いだからという理由で会うのが嫌で関わりたくないのではなく…
これ以上関わって私まで目立ってしまう存在になることが嫌だ。
しかも悪い意味での目立つなんてものは特に御免だ。
「嫌いじゃないんだよね?」
「え?えぇ。まぁ…嫌いではないですけど」
「嫌いじゃないんだ」
「はい…?」
私の言葉を聞いた途端、いつものように気の抜けたような口調へと戻った。
「それなら問題ないね~。俺はこれからも毎日翼ちゃんに会いに行こーっと」
「えっ…先輩、話聞いてました?もう関わりたくないって言ったんですけど?」
「でも嫌いじゃないんだよね?そう言ったよね~」
「言いましたけど、関わりたくないとも言いましたよね」
「よしよし~。おまえも翼ちゃんも可愛いな。俺のお気に入り~♪」
「いや、あの、先輩?だからっ」
「さーてと。そろそろ帰ろっかな~。またね、翼ちゃん」
私の話は全く聞かず、手をひらひらとさせて帰って行く先輩。
そんな先輩の後ろ姿をただただ呆然としたまま見送った。