- 春佳side -
夏休み。
居場所のない俺には苦痛な期間だ。
それに今年はいつも以上に苦痛を感じている。
翼ちゃんや耀ちんと毎日絡んでいたからそれがなくなってしまって寂しい気持ちがある。
その気持ちが相まって一層苦痛だ。
「会いたいな…」
少しの時間だけでも会えたらこんな気持ちは一瞬で消えそう。
だけど、それは無理だろう。
翼ちゃんの家も知らないし、俺の連絡先を渡したものの翼ちゃんから連絡がくることは一度もなく…
結果、俺は翼ちゃんの連絡先を知らない。
まぁ、翼ちゃんが連絡をしてくれるなんて期待は全くしていなかったけど。
耀ちんはたまに連絡を取り合っているものの、毎日のようにテレビなどで見ていることから忙しいってことがわかる。
だから会うことなんて難しいだろう。
「はぁ……」
自然と溜め息が出る。
夏休み前まではほとんどしていなかった喧嘩をここ最近は頻繁に繰り返している。
喧嘩をする理由は1つ。
この苦痛な気持ちを忘れることが出来るからだ。
なにも考えないでいられる時間。
俺は人一倍喧嘩が強いわけじゃない。
だから殴られたり、蹴られたりもする。
そして全身にあざや傷が出来る。
その状態で家に帰り、見つかってしまうと、冷ややかな目で見られる。
そんな目で見てくるくらいなら怒って欲しいものだが…そんなことするわけもない。
空気のような存在の俺に目線を向けるだけまだましなのかも。
「は…る…?」
ふと、消え入るような声で俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。