「おかえりなさい」
妻が出迎えると夫は呑めないはずの酒を呑んだのかべろべろに酔い「たらいまぁ!」そう言うと服を脱ぎ捨てリビングですぴすぴと寝る。
また脱ぎ捨ててる、服を大事にする気はないのかしら!
そう思った妻は夫の抜け殻を集めスーツをハンガーに掛け持ち運べるアイロンでアイロン掛けをする。
ワイシャツを洗濯機に入れようとするとワイシャツの赤に気がつく。
「あら、」
妻の顔が鬼に変わり寝ている夫を叩き起す。
「酔いが覚めたかしら?」
ずぶ濡れになった夫が正座をして妻に誤解だよと弁解をする、が妻はぷぅと頬を膨らませ許しませんとそっぽを向く
そんな妻の内心は大慌て
大好きな夫が居なくなっちゃうんじゃないか
夫は格好いいから会社でもモテモテで可愛い子に乗り換えちゃうんじゃないか
怒っているはずなのにうるうると瞳を潤ませ怒る妻に困ったように笑うと夫は妻を抱き寄せた。
「これは営業先の女の人が転んだのを助けた時に付いたんだよ、心配させてごめんね」
撫でる手の優しさにぽろぽろと涙を零す妻によしよしと笑うと妻は何も言わずに夫に腕を回しぎゅうと腕に力を込めた。
相当我慢してるんだなと夫が抱き締めると、妻が小さい声で言う
「三ヶ月だったんです、」
耳を疑った夫が妻に聞き返すと真っ赤に晴れた目で妻が
「妊娠三ヶ月です」
と笑う、目を大きく開いた夫は大きな笑顔で妻を優しく抱き寄せ「俺も父親だ」と笑う
今日も今日とて幸せな夫婦だ。