アンの気持ちが俺にあることは昔から知っている。

それなのに今まで彼女に俺の気持ちを告げなかったのは、彼女の身を案じてのこと。

王族でいることは必ずしも幸せとは限らない。

華やかな世界に見えるかもしれないが、常に命の危険にさらされている。

敵を排除しない限り、安心してアンを花嫁にはできないのだ。

今朝俺とディオンの食事に毒をもった奴は、ラルフの報告によればエッジウェア王国の者だった。

シャメル国王は何としてでも俺を殺したいらしい。

俺が狙われるのはいい。

だが、アンが狙われて殺されてしまったら……俺はもう生きてはいけないだろう。

「愛してる」

愛おしげにアンを見つめ、彼女のそっと口付ける。

それは、彼女が寝ている時にする俺の一種の儀式だ。

〝そのまま彼女を奪え〟と俺の中の魔王が囁く。