「アンは……俺にとっては姉みたいなものだし、そんなに強く言えないっていうか……」

「まあ、いい。アンのことは俺が対処する。お前は軍備に集中しろ。あと数日で戦いになるからな」

ディオンの肩をポンと叩くと、こいつは拍子抜けした顔をする。

「俺を怒らないのか?」

「これは、アンと俺の問題だからな」

城を出たいって考えるのは、それだけ彼女が俺の側にいるのがつらいってことだ。

誰が説得しても聞かないに違いない。

「……なんか、今日は兄上にしてはやけに物分かり良すぎねえ?」

ディオンは警戒するように俺を見る。

「それは、いつも俺が非道だと言いたいのか?」

「い、いや……なんでもない」

ディオンは大きく頭を振って否定すると、そそくさと俺の前から逃げ出した。

そんな弟の後ろ姿を見送って、フッと微笑する。