「ディオン、何をブツブツ呟いている?不審に思われるぞ」

弟を注意すれば、ディオンは俺に気づいてスッと背筋を伸ばし、俺に謝る。

「……ああ。すまない。アンが城を出ることを考えてるみたいで……あっ‼︎」

ディオンはまずいことを言ったと思って慌てて口をつぐんだ。

だが、もう遅い。

「それはどういうことだ?」

弟に顔を近づけて脅すように追及すれば、ディオンは渋々白状した。

「……アンが俺の知り合いで侍女を探している奴がいないかって聞いてきて。俺は城出なんかするなって言ったんだが、アンは反発して……説得できなかった」

俺に叱責されると思ったのか、ディオンの声はしりすぼみになる。

「なるほど。お前じゃ止められなかったわけか」

ディオンをわざとからかえば、こいつは必死に言い訳した。