「ただあれ以外に興味がないだけだ」

冷淡にそう返すと、コレットは俺をどこか憐れむような目で言った。

「そういうの、なんて言うか知ってるかしら?〝一途〟って言うのよ。こんなに王太子さまに愛されてるのに、アンは鈍感だから気づかない。可哀想な王太子さま。あなたに同情するわ」

「それはどうも」

もうコレットの相手をする気になれず、形だけの礼を言ってまた歩き出すと、俺の背中に向かってコレットは声を張り上げた。

「待ちなさいよ。まだ話は終わっていないわ。アンがいるのに、どうして隣国の王女と結婚なんか決めたのかしら?」

「俺が決めたわけではない。フィオナが勝手に決めたんだ」

足を止めてコレットを振り返り、事実をコレットに伝える。

すると、彼女はチッと舌打ちした。

「あのババア。私のアンを悲しませるような真似をして……許さない」