ニヤニヤしてアンの毛布に手をかければ、彼女は俺の手をペシッと叩いて怒った。

「もう!なんでこういう時は、魔法を使わないの?」

「俺の楽しみが減るだろう?」

悪戯っぽく微笑むと、アンは悔し紛れに毒づいた。

「……この悪魔」

「まあ、否定はしない」

実際、悪魔と契約しているしな。

ウィンクして見せると、「さあ、早く食べるぞ」とアンを急かした。

「ま、待って。まだ着替えが……」

アンが慌てて声をかける。

「もう着替えは終わっただろ?」

フッと微笑してそう言えば、アンは自分の身体を見て目を丸くした。

「……本当だ。魔法使ったのね」

「今日は特別だ。アンを待っていたら、あっという間に日が暮れるから」