「クリスは私が知っている限りは一日中部屋の中にいることが多かったから、花くらいは見せてあげたかったの。それにしても……クリスは剣の腕前、相当よね?いつ練習していたの?」

ずっと病弱な振りをして騙していたことを怒っているのか、アンは恨みがましい視線を俺に向ける。

「深夜にディオンやグレンを相手にやっていた」

「私も練習見たかったな」

「見学させていたら、〝私もやる〟と言って聞かなかったろう。なんせ俺に内緒でこんな雪山に来る無計画で無鉄砲な性格だから」

やんわりとアンを責めると、彼女は気まずそうに俯いた。

「……ごめんなさい。図書室でクリスが見せてくれた本を今日また見たらね、立体画のラミレス王が聖剣はオリン山にあるって喋ったの」