父の遠征について行ったのは四年前。

当時ディオンは十三だったとしても多感な年頃で……。

もっと警戒心を持てとアンに説教したくなる。

「2回も行ったんだな」

ギロッと睨めば、アンは「うっ!」と言葉につまりながらも必死に言い訳した。

「だって……クリスがいなくて寂しかったんだもん。でも……ディオンは寝相悪いし、汗臭くてクリスみたいにいい匂いしないし……すぐに自分のベッドに戻ったんだよ」

ディオンも不憫だな。

随分な言われよう。

「俺はそんなにいい匂いなんだ?」

「バイオフルールの香りがする」

アンはクンと俺の匂いを嗅ぐ。

バイオフルールは、常春のインヴァネスで一年中咲いている特別な花。

「それは、アンが小さい頃からずっと俺の部屋に飾っているから、匂いが髪や服に移ったんだろう」