アンが『城を探検しよう』と言って、ずっと部屋に篭っていた俺を強引に連れ出して、庭園の中を歩き周り、しばらく人が立ち入っていない場所に入り込んだ。

そして、草が生い茂る場所を飛び歩いて、古井戸に落ちたのだ。

幸い水が枯れていて溺れ死ぬことはなかったが、
ふたりとも下に落ちて足を痛め、助けが来るまで脱出できなかった。

「あの時……夜まで誰も来なくて……もう見つけてもらえないかと思った」

昔を思い出して、アンはクスッと笑う。

確か、日が暮れても誰も来なくて彼女が泣いて、こんな風に俺が抱いてなだめたのを覚えている。

「グレンが助けに来て、延々とお説教されたな」

「うん。それに、お母さんには、三日間クリスの部屋には出入り禁止って言われたんだよね」

「それなのに我慢出来なくて、俺のところに夜這いに来たよな？」