包み込むように抱いてアンを温める。

すると、彼女は「あっ、クリスの肩に血!」と言って騒ぎ出した。

「さっき私が噛んだからだよね?ごめんなさい」

アンは申し訳なさそうに謝る。

……ああ、そういえば、弓を抜いた時に彼女に噛まれたっけ?

アンの方に気を取られていて、自分の痛みには全く気づかなかった。

「大丈夫。こんなの大したことない」

そう言って、自分の肩に触れて傷を治す。

「もうこれで治った」

アンを安心させるように微笑むと、彼女は少しホッとしたような顔をした。

「……洞窟でこうしてると、昔のこと思い出すね」

この状況で〝昔のこと〟……。

その言葉でピンときた。

「ああ……一緒に井戸に落ちた時のとこか」

あれは十歳の時だったろうか。