ディオンだったら痛そうにしてても構わず抜いただろうが、アンではそうはいかない。

横にいるモコがアンを励ますように彼女の手をペロリと舐める。

多分魔力を使っても治癒はできるが、矢を抜く時の痛みは軽減できないだろう。

アンの上体を起こし、俺の胸に抱き寄せる。

だが、あまりに彼女の身体が冷たくて驚いた。

グッタリした様子で俺に寄りかかるアンの耳元で告げる。

「これから矢を抜く。痛むだろうが、その時は俺の肩に嚙みつけ」

コクンと力なくアンは頷く。

彼女の頭を俺の肩に寄せると、矢に手を伸ばして一気に引き抜いた。

すると、激痛が走ったのか、アンは「ううっ」とくぐもった声を出しながら俺の肩に噛みつき、痛みを堪える。

「よく耐えた。次は毒を吸い出す。あともうちょっと我慢しろよ」