誰か呼ぼうとしたら、コンコンとノックの音がした。

「入れ」と返事をすると、「ラルフ宰相に言われて昼食をお持ちしました」と言ってコレットがトレーに軽食を乗せて運んで来る。

さすが、ラルフ。

俺が仕事を終わらせる時間を読んでいたのだろう。

コレットは執務机の横にある丸テーブルにトレーを置く。

そして、俺に目を向けた。

その目はどこか挑戦的。

「毒味でもしましょうか?」

「いや、いい。お前がそう言うなら、毒は入っていないのだろう」

俺の言葉にコレットは顔をしかめて皮肉を言う。

「まあ随分と私は信頼されてるのね。そう言えば、昨日アンと一緒にオリン山まで行ったんでしょう?アンが嬉しそうに話してたわよ。でも、次は気をつけなさい。私の使い魔がオリン山周辺でエッジウェアの騎士を数十人見かけたらしいわ」

「騎士……ね」