アメジストの石を見つめ、アンははにかむように笑う。

考えてみたら、今まで彼女に宝石をプレゼントしたことはない。

こんなに喜ぶなら、いずれ亡くなった母の宝飾品を彼女に渡そう。

買った花束からピンクの花を一本抜いて彼女の髪にさすと、俺は微笑んだ。

「似合ってる」

たまらずアンに触れたくなって、彼女の漆黒の髪を一房掴んで口付ける。

人目もあるし、直接唇にするのは我慢した。

アンの手に自分の指を絡めてその場を去ると、他の店も見て回る。

こんな風に手を繋いで外を歩くのも初めてで、コロコロ変わる彼女の表情を見ていると楽しかった。

俺達にとっては幸せに満ちた時間。

それから、いっぱい働いてくれたモコに肉を買ってやり、馬車を捕まえて中でひと息つく。

自分の膝の上で肉をカリカリして食べるモコを見て、アンは不思議そうな顔をした。